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リモートサポートで顧客の真意を引き出す:深掘り傾聴の技術

Tags: 傾聴, コミュニケーション, リモートサポート, 顧客理解, サポートスキル

リモートでのサポート業務において、顧客の満足度を高め、さらには期待を超える「感動体験」を提供するためには、単に問い合わせ内容に正確に答えるだけでなく、顧客の言葉の裏にある真意や感情、そして隠れたニーズを理解することが極めて重要です。特に、対面での応対と異なり、非言語情報が限られるリモート環境では、この「聴く力」の質が、応対の成否を大きく左右します。

この記事では、リモートサポートで顧客の真意を引き出し、より深いレベルで顧客を理解するための「深掘り傾聴」の技術とその実践方法についてご紹介します。

リモートサポートにおける傾聴の重要性

リモート環境では、声のトーンや話し方、言葉選びから得られる情報はありますが、表情や身振り手振りといった対面特有の情報が不足しがちです。そのため、顧客が言葉にしていることだけでなく、その言葉の背景にある状況や感情、さらには顧客自身も気づいていない潜在的な課題を察知するためには、より意図的かつ積極的に聴く姿勢が求められます。これが、単に話を聞く以上の「深掘り傾聴」です。

深掘り傾聴とは

深掘り傾聴とは、顧客が話す内容を表面的に捉えるだけでなく、その言葉の選択、話すスピード、声の抑揚、そして「なぜそう思うのか」「その結果どうなったのか」といった背景や感情に注意を向け、積極的に理解を深めようとする傾聴のアプローチです。これにより、顧客が抱える問題の根本原因や、真に求めている解決策が見えてきます。

リモート環境では、ツールの操作や通信状況といった技術的な側面も考慮しつつ、意識的に「聴く」ことに集中し、以下のような技術を組み合わせていくことが有効です。

リモート環境で実践する深掘り傾聴の技術

1. オープンクエスチョンの積極的な活用

「はい」「いいえ」で終わるクローズドクエスチョンだけでなく、「どのように」「どのような」「具体的に」「について詳しく教えていただけますか」といった、顧客が状況や考えを自由に話せるオープンクエスチョンを積極的に使用します。これにより、顧客からより多くの情報や背景を引き出すことができます。

リモートでの応対では、チャット機能を使って質問を明確に示したり、確認のためにテキストで質問を繰り返したりする工夫も考えられます。

2. 沈黙を恐れずに待つ

顧客が何かを考えたり、次の言葉を探したりしている際に、すぐに話し始めたり、次の質問をしたりせず、数秒間の沈黙を許容することも重要です。特に複雑な問題や感情的な内容の場合、顧客には考える時間が必要です。リモートでは相手の様子が見えにくいため、不安になることもありますが、意図的な短い沈黙は、顧客に安心して話してもらうための空間を提供します。

ただし、長すぎる沈黙は不安を与える可能性があるため、数秒待ってから「何か補足したいことはありますか」「他に気になる点はありますか」といった声かけを入れるのが良いでしょう。

3. 感情や非言語的なサインへの応答

声のトーンが沈んでいる、話し方が早口になっている、言葉に詰まる様子があるなど、リモートでも声を通じて伝わる感情や非言語的なサインに注意を払います。そして、それに気づいていることを伝えることで、顧客は感情も受け止めてもらえていると感じやすくなります。

例:「お困りのご様子ですね」「少々ご不安に感じていらっしゃるかもしれません」など、共感の言葉を添えることで、顧客は心を開きやすくなります。

4. 要約と確認による理解の深化

顧客の話の節目や、重要な情報を得たと感じた際に、自身の理解が合っているかを要約して顧客に確認します。「つまり、〇〇ということでしょうか」「私が理解したのは、△△という状況でよろしいでしょうか」といった形で確認することで、認識のずれを防ぎ、顧客に「きちんと聞いてもらえている」という安心感を与えます。これにより、顧客はさらに詳細な情報を提供してくれる可能性が高まります。

リモートでは、この要約や確認をチャットで送ることで、顧客が落ち着いて確認する時間を確保することも可能です。

5. 問題の背景や影響に関する質問

表面的な事象だけでなく、「それが起きたのはどのような状況でしたか」「その問題によって、お客様の業務にどのような影響が出ましたか」といった、問題の背景や結果、顧客への影響に関する質問をすることで、問題の根本原因や顧客の真のニーズを深掘りします。これは、単なる問題解決にとどまらず、顧客の置かれている状況全体を理解し、より付加価値の高い提案をするために不可欠です。

実践へのヒントと継続的なスキルアップ

リモート環境での深掘り傾聴スキルを向上させるためには、意識的な練習と振り返りが重要です。

まとめ

リモートサポートにおいて、顧客の真意を引き出す深掘り傾聴の技術は、単なる問題解決者としてではなく、顧客の真のパートナーとして信頼関係を構築し、期待を超える感動体験を提供するための強力な武器となります。オープンクエスチョンの活用、沈黙の受容、感情への応答、要約と確認、背景や影響への質問といった具体的な技術を意識し、日々の応対の中で実践を重ねることで、あなたのサポートスキルは確実に向上します。

リモート環境だからこそ、意図的に「聴く」ことに集中し、顧客一人ひとりの声に真摯に耳を傾けていく姿勢が、サポート業務の質を高め、あなたのプロフェッショナルとしての成長にも繋がるはずです。ぜひ、今日から深掘り傾聴の実践を始めてみてください。