リモートサポートで顧客の「次なる一歩」を導く:行動変容を促すサポート技術
リモートサポートにおける「次なる一歩」を導く重要性
リモートサポートにおいて、お客様の問題を解決することはもちろん重要です。しかし、真に顧客に喜ばれ、感動体験に繋がるサポートとは、単に目の前の課題を解決するだけでは完結しません。お客様がその解決策をどのように活用し、次にどのような行動をとるべきかを明確に提示することで、初めてサービス全体の価値を実感し、自身の目標達成へと繋がります。
特にリモート環境では、対面のようにその場での細やかなフォローや、お客様の状況を五感で感じ取ることが難しい場合があります。そのため、サポート終了後に「結局どうすれば良いのだろう」とお客様が迷ってしまうリスクも高まります。お客様の「次なる一歩」を具体的に示し、行動変容を促すことは、リモートサポート担当者にとって、顧客満足度を高め、リピートやポジティブな口コミに繋げるための重要な技術と言えるでしょう。
本記事では、単なる問題解決に留まらず、顧客の行動を促し、サービス活用による成功体験へ導くための具体的なサポート技術と考え方について解説します。
なぜ顧客の「次なる一歩」を導く必要があるのか
お客様がサポートに連絡してくるのは、何らかの課題や目的があるからです。多くの場合、サポート担当者はその「課題」の解決に注力します。しかし、課題解決はあくまでお客様が最終的な目的を達成するための一つのステップに過ぎません。
例えば、ある機能の使い方が分からず問い合わせてきたお客様の場合、機能の使い方を説明して問題が解決したとしても、その機能を使って何を達成したかったのか、その後にどのような作業が控えているのかといった全体像が見えていないと、再び立ち止まってしまう可能性があります。
お客様が、解決策を自身の状況に合わせて具体的に活用し、次に取るべき行動を迷わず実行できる状態に導くこと。これが、お客様のサービス活用を促進し、目的達成、ひいてはお客様自身の成功体験に繋がります。お客様が「このサービス(そして、このサポート)のおかげで、やりたかったことが実現できた」と感じたとき、それは単なる満足を超えた「感動体験」となるのです。
顧客の「次なる一歩」を導くための具体的なアプローチ
お客様の行動変容を促し、「次なる一歩」を明確にするためには、以下の要素を意識したコミュニケーションが効果的です。
1. 顧客の「真の目的」と「その後の状況」を深く理解する
問い合わせてきた目の前の課題だけでなく、なぜその課題が発生したのか、お客様はその課題を解決して何を達成したいのか、解決後にどのような状況になることを期待しているのかを深く理解することが出発点です。
- 質問の工夫: 「この機能で何ができなくてお困りですか?」だけでなく、「この機能を使って、最終的にどのような状態にしたいとお考えでしょうか?」「この作業の後には、どのようなことをされるご予定ですか?」のように、課題の背景やその後の状況を尋ねる質問を加えます。
- 傾聴と共感: お客様の話を丁寧に聞き、言葉の裏にある意図や感情、そして「〜を実現したい」という前向きな目的意識に寄り添う姿勢を見せます。「なるほど、〇〇をされたかったのですね」と、お客様の言葉と目的を繰り返すことも有効です。
2. 解決策を「次への橋渡し」として提示する
単に問題の解決方法を伝えるだけでなく、それがお客様の「次なる一歩」にどう繋がるのかをセットで説明します。
- 具体的な手順の提示: 解決策を実行するための具体的な手順を、分かりやすく、お客様の状況に合わせて提示します。リモートであれば、画面共有でお客様の画面を見ながら操作をガイドしたり、チャットで具体的な手順をリスト化して送るなどが有効です。
- 期待される結果の明確化: その解決策を実行することで、どのような状態になるのか、お客様にとってどのようなメリットがあるのかを伝えます。「この設定を変更すると、次回からは〇〇の作業が不要になります」「この操作を完了すると、お待ちかねの△△に進めるようになります」のように、行動の先にあるポジティブな結果を具体的に示します。
3. 「次に取るべき行動」を具体的に示唆する
問題解決が完了した後、「これで解決しました。ありがとうございました」で終わらせず、その後に取るべき具体的な行動を提案します。
- 具体的なネクストアクションの提示: 「この問題は解決しましたので、次に〇〇の機能を使ってみてください」「この後、△△のデータを取り込んでいただくと、次のステップに進めます」のように、何をすれば良いかを具体的に伝えます。
- オプションや推奨事項の提示: お客様の目的や状況に応じて、いくつか考えられる選択肢や、多くのユーザーが次に取る推奨される行動などを示唆します。「もし〜をされたいのであれば、次に◇◇を試すことをお勧めします」「この機能と併せて☆☆を使うと、さらに効率が上がります」のように、お客様がさらにサービスを活用するためのヒントを提供します。
- 参照情報の提供: 関連するヘルプ記事、FAQ、チュートリアル動画などの情報を、必要なタイミングで提供します。「〇〇の操作方法については、こちらのガイドが詳しいです」「△△の活用事例については、こちらのブログ記事も参考になります」のように、お客様が自分で学び進めるためのリソースを提示します。リモートであれば、チャット等で直接リンクを送るのが便利です。
4. 行動への「後押し」と「確認」を行う
お客様が実際に次の一歩を踏み出せるよう、心理的な後押しを行い、理解を確認します。
- 自己効力感を高める声かけ: お客様が自分でできるという自信を持てるような言葉をかけます。「この操作は少し難しく感じるかもしれませんが、多くの皆様が問題なくできています」「ここまでの手順、完璧でしたよ」のように、お客様のこれまでの行動を肯定したり、励ましの言葉を添えます。
- 理解と次の行動の確認: お客様が「次に何をすれば良いか」を正確に理解したかを確認します。「〇〇様の場合、この後△△をされるのがよろしいかと思いますが、いかがでしょうか?」「では、次に◇◇を試してみていただけますでしょうか?」のように、お客様に問いかけ、次の行動について合意を形成します。
リモート環境で「次なる一歩」を導くための工夫
リモートサポートならではのツールや特性を活かすことで、より効果的に顧客の行動を促すことができます。
- 画面共有の活用: お客様の画面を共有してもらい、一緒に操作しながら次に進むべきステップを具体的にガイドします。「では、次にこちらのボタンをクリックしていただけますか」「〇〇様が見ている画面で言うと、左側のメニューですね」のように、視覚的な情報を使って誤解なく伝えます。
- チャットでの情報補完: 説明した内容の要点、次に取るべき具体的なステップ、関連するリンクなどをチャットで送り、後から見返せるようにします。音声での説明に加えてテキスト情報があることで、お客様は迷ったときに確認できます。
- ツールの利用: 手順を示す短い動画、操作をシミュレーションできるツール、分かりやすいフロー図などを事前に準備しておき、必要に応じて共有することも考えられます。
失敗事例から学ぶ改善策
「次なる一歩」を導くことに失敗する例として、「問題は解決したが、その後のサービスの利用が進まず、再び別の問題で問い合わせが来た」というケースがあります。
- 失敗の原因: サポート担当者が目の前の問題解決だけに集中し、お客様がその解決策を自身の目的達成にどう活かせば良いのか、次に何をすればその目的に近づけるのか、という視点が欠けていた。
- 改善策: 問題解決後、「この機能は、お客様が〇〇という目的を達成するために非常に有効です。この後、具体的に△△のデータを用意して、この機能を使ってみていただけますでしょうか?もしデータがない場合は、まずはデータ収集について解説したこちらの記事をご覧ください」のように、解決策とその後の活用方法、そして具体的な次の行動をセットで提示するフローをサポートプロセスに組み込みます。
まとめ:顧客の成功体験を共に創造する
顧客の「次なる一歩」を導くサポートは、単にヘルプデスクとしての機能を超え、お客様のビジネスや生活における成功体験を共に創造するパートナーとしての役割を果たすことに繋がります。
これは一朝一夕に身につく技術ではありませんが、日々の応対の中で「このお客様は、この後何をするのだろう?」「どうすれば、解決した内容を最も効果的に活かしてもらえるだろう?」と意識することから始まります。お客様の立場に立ち、その先の未来を見据えた提案を心がけることで、お客様からの信頼はさらに深まり、「このサポートがあってよかった」「このサービスを使ってよかった」という強い感動とエンゲージメントを生み出すことができるのです。
リモート環境であっても、心を込めてお客様の次なる成功を願う姿勢は必ず伝わります。今回ご紹介したアプローチを参考に、ぜひ日々のサポート業務にお役立てください。そして、お客様からのポジティブな反応を通じて、ご自身の成長を実感していただければ幸いです。